昨夜、中国エンタメ界の注目を一身に集めたイベントがあった。2025年「テンセントビデオ金鵝栄誉授賞式」だ。しかし、いつものスターたちの輝きとは少し違う。今年、式場の中心にいたのは、人間ではなく、「それ」だった――AI、つまり人工知能だ。
授賞式のハイライトは、なんと「年度AI映画」「年度AI短片」「年度AI短劇」「年度AI短番」という、AI作品専用のカテゴリーが設けられ、見事な作品たちが表彰された。『私を飛ばせて』が年度AI映画に、『機械の心と犬の尾』が年度AI短片に輝くなど、AI生成コンテンツが公式の舞台で主役を張った瞬間だ。
SNSでは、早速賛否両論が渦巻いている。「すごい！未来が来た！」「AIの表現力、もう人間を超えてるんじゃない？」と興奮する声がある一方で、「脚本も演出もAIなら、俳優や監督はどうなるの？」「感情のこもった人間の作品は、もう価値がなくなるの？」という不安と疑問の声も少なくない。
確かに、受賞した『興安嶺怪異譚』のような短劇や『新世界ロード中』のような短編アニメを見ると、その完成度には目を見張るものがある。数年前ならSFの領域だったクオリティが、今や誰でも（ある程度の技術とリソースさえあれば）生み出せる時代になったのだ。
でも、ちょっと待ってほしい。私たちは本当に、AIが全てを作る世界を望んでいるのだろうか？
授賞式の華やかな舞台の裏側では、複雑な想いを抱えるクリエイターたちがいるに違いない。長年修行を積んだ脚本家、一つのカットに情熱を注ぐ監督、役に魂を込める俳優…。AIの「効率」と「無限の生成能力」の前で、人間の「時間をかけた熟成」と「唯一無二の体験に基づく創造」は、どんな価値を持つのか。この授賞式は、そんな根源的な問いを、業界関係者だけでなく、全てのコンテンツ消費者に突きつけたと言える。
「金鵝栄誉」がAI部門を設けたことは、一つの明確なメッセージだ。「AIはもはやツールではなく、共創者であり、時には単独の創造者たりうる」。テンセントという巨大プラットフォームがこの流れを公式に認め、後押しした意義は大きい。
これは終わりの始まりだろうか？それとも、新しい創造の黄金時代の始まりだろうか？AIが受賞台に立つ今、私たち観客に求められているのは、ただ受け身で作品を消費することではなく、『何が真に心を動かすものなのか』を、より深く自分自身に問い続けることなのかもしれない。あなたは、AIが生んだ物語に、涙を流すことができるだろうか？
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