今日、SNSをスクロールしていたら、#hitfm停播 というタグが目に飛び込んできた。
「え、まさか…」と思いながら記事を開くと、やはりそうだった。22年間続いたHIT FMが、今日で放送を終えるらしい。北京88.7、上海87.9…。その周波数を目にした瞬間、私はロンドンの自宅のキッチンで、思わずスマホのラジオアプリを開き、「北京88.7」と検索欄に入力してしまった。
もちろん、何も聞こえない。『地域制限のため、このコンテンツはお楽しみいただけません』という冷たい表示が出るだけだ。窓の外は雨で、コーヒーの香りが漂っている。なんだか、高校時代の放課後を思い出した。あの頃は、イヤホンから漏れるHIT FMの電波に、未来へのわくわくを乗せていたのに。
最初に聴いた曲は、多分リンキン・パークの「Numb」だった。英語のリスニング教材代わりに、と父が買ってくれたラジカセで。雑音混じりだったけど、MCのValenが「こんにちは、HIT FM！」と言うあの明るい声が、なぜか勉強机の上の参考書の重苦しさを、少し軽くしてくれた。
『Hit Morning Show』のMike DやAndyのくだらない（でも愛嬌たっぷりの）掛け合いを聞きながら登校した朝。週末の『Top 20 Countdown』でBillboardの新曲をチェックして、友達と「今週はこれが一番だね！」と盛り上がったこと。あの電波は、確かに私たちの「音のリビングルーム」だった。
ふと、手帳をめくると、昔貼ったままのシールが剥がれかけていた。大学受験前、深夜ラジオを聴きながら「海外に行って、生の音楽を聴きたい」と書きなぐったページだ。
皮肉なものだ。今、私は海外にいる。生の音楽にも触れられる。でも、あの頃、雑音と共に届いてくれた「故郷の音」には、もう簡単にはアクセスできなくなってしまった。映画もドラマも、時には音楽でさえ、「この地域では視聴できません」の壁にぶつかる。青春の記憶そのものが、地理的な線で分断されているような、妙な寂しさを覚える。
電波は止まる。でも、記憶の中のリズムは止まらない。
HIT FMが繋いでくれた、あの音楽への熱い思いは、形を変えてどこかで続いている気がする。たとえ物理的な周波数が消えても、私たちがそれぞれの場所で、あの曲を流せば、そこには小さな「音のリビングルーム」が再現される。
あなたがHIT FMで最初に聴いた一曲は何でしたか？ あの時、隣にいたのは誰ですか？ 遠く離れた場所にいても、共有できる思い出があるなら、教えてほしい。私の分のコーヒーも淹れながら、聞かせてください。
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